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浸水被害家屋の「消毒・乾燥・復旧」へ向けた3つのポイント

 

台風による浸水被害家屋の復旧に関する情報をコラムとしてまとめました

 

はじめに

 
 このたびの台風19号の被害にあわれた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
 環デザイン舎では、浸水被害家屋復旧へ向けた住まいのボランティア相談を行っております。仕事場が中平窪ということもあり、ご近所で建築の知識を活かしたボランティアを行いたいと考えました。ピースボート災害支援センター主催の「被災家屋の対応説明会」では、被災家屋復旧方法を学ばせていただきました。その後、「被災家屋の対応説明会」で建築の質疑対応者として参加させていただいています。
 被災家屋の対応説明会や個別の家屋調査へ伺い、被災者の方から「これからどうしたらよいのか」という質問を伺っていると、家屋復旧の情報が不足していることを実感しました。そこで、浸水被害家屋の「消毒・乾燥・復旧」へ向けて、壁と床の「つくり」、「はがし方」、「なおし方」の3つのポイントを紹介します。
 

カビによる健康被害を防ぐことが目的です

 
 浸水被害にあわれた家屋から泥などを取り出し清掃された後には、建物を消毒し、乾燥を行い、リフォームして直すという流れになります。
 建物に泥等がついた部分を消毒し乾燥するためには、浸水した床や壁をはがし、その下地材や構造材、基礎等を露出させる必要があります。露出させた各部を消毒乾燥を数回行い、新たな建材や洗い消毒した建材で直おすことで、今後カビが生えることを防げます
 カビが繁殖するためには、温度、湿度、栄養の3要素が必要になります。浸水時についた泥などが栄養になります。だから、泥を清掃し消毒しないと、来年の梅雨時などにカビが生える恐れがあります。今までに浸水被害にあわれた事例からも、消毒・乾燥させなかった壁の中がカビだらけになることがあります。
 今後、カビの不安を減らすためにも、壁と床のつくり、はがし方、なおし方の情報を知っていただきたいと思います。
 
 今回の情報を作成するために、現地調査情報の他に、以下の情報を参考にさせていただきました。復旧等の参考になりますのでご覧下さい。
 
 ・風組関東Facebookページ
 ・浸水被害後、復旧情報を発信している信州大学工学部助教 中谷岳史氏Facebookページ
 ・震災がつなぐ全国ネットワークBLOG内「水害にあったときに」冊子
 ・浸水被害を受けた住宅の復旧における注意事項 北方建築総合研究所
 

1.壁と床のつくりと対応方法

 
壁と床のつくりと対応方法

住まいの床や床下は、建て方により異なります。組み合わせは様々ですが、代表的な3つのつくりを紹介します。
根太レス床:床仕上げ、床下地の下に根太がなく、厚い合板が大引の上に張ってある床。大引間に断熱材が入っている場合がある。
根太床:床仕上げ、床下地の下に根太があり、下に大引きがある床。根太間に断熱材が入っている場合がある。
畳根太床:築30年前以上の建物に多く、畳の下に荒床(あらゆか)という板が張られ、下に根太、大引きがある床。新しい建物は荒床でなく合板が多い。
 
壁と床のつくりと復旧方法を地面から上部に向けて紹介します。
 
①土間(床下地面レベル)
・土間は、土かコンクリートの2種類が主となります。
・土の場合は、泥を乾燥させパリパリな状態になれば、取り除く、もしくは土と混ぜる。
・コンクリートの場合は、水や泥を取り出し清掃した後に、消毒、乾燥を行う。
・土の場合は、浸水関係なく日常的に地中から水蒸気が上がってきます。そのため、泥を取り除くか土と混ぜた後は、床下の換気を良好にし続ける必要があります。リフォームで土の上にコンクリートを打つ方法もあります。
 
②床下構造と断熱
・床仕上材の下には、床仕上げを支える下地材として、荒床(杉等の板)や合板があります。その下に、根太、断熱材、大引、束等があります。
・床下では、断熱材の有無を確認し、発泡スチロール系の場合は取り外し洗えば再利用できます。繊維状(グラスウール等)の断熱材の場合は、取り除き新しいものに交換する必要があります。
・畳の下には、荒床という板が敷き並べられています。荒床はバールなどではがし、洗浄、消毒、乾燥を行えば再利用可能です。
・合板の場合は、新しいものに交換することが望まれます。
・1階の床は、構造的に影響が最も少ない部位になります。安心してはがしていただいてかまいません。
 
③床材
・床材は、畳、無垢フローリング、複合フローリング、塩ビシートが多く使われています。
・床材は基本的には交換することが望ましいです。床材と下地材の間に入った泥がカビる可能性があるためです。しかし、カビが生えない場合も見られるので、経過観察する方法もあります。
・床仕上げ裏のカビ確認方法としては、床下点検口をつくる際などに、床材と床下地材の間にカビが発生していないか確認する方法もあります。
・無垢フローリングは、きれいにはがすことは難しいので、浸水で反ったりしたものを表面削り、塗装し、再利用する方法があります。
・複合フローリングは、水を吸うと膨らむため、再利用が難しい建材です。経過観察で交換検討ください。
・水まわりの床に使われることが多い塩ビシートは、通気性がないため、はがすと裏にカビが生えていることが多い材料です。一度はがし、新たに貼りなおすことが望まれます。
 
④壁と断熱材
・床上浸水した場合は、壁をはがし、浸水した部分の壁の中も清掃、消毒、乾燥が必要になります。最も見落とされている部分です。後で、カビが生えやすい部分です。
・壁は主に、石こうボードという板でつくられています。その上にクロスや塗装で仕上げられています。石こうボードは、吸水するともろくなるため交換が望まれます。
・壁の中に断熱材がある場合は、床下と同様、発泡スチロール系の場合は、取り外し洗えば再利用できます。繊維状の断熱材の場合は、取り除き新しいものに交換する必要があります。
・壁の中は、コンセントプレートを外すことで、壁の中をのぞける場合があるので確認ください。コンセント自体も交換が望まれます。
 
⑤通気口の種類

 
通気口の種類

 
・壁の中には、柱や間柱、断熱材があり、その下に土台、基礎があります。
・新しい建物は、土台と基礎の間に樹脂製の基礎パッキンがあります。基礎パッキンの隙間を通して床下換気を行っています。そのため基礎パッキンの小さな穴に泥がたまると床下の換気ができなくなるので、高圧洗浄機などで念入りに泥を取り除いてください。
・古い建物には、基礎部分に換気口という穴が開いており、格子などでふさがれています。床下を乾かすために、換気口のまわりに物を置かず、空気の流れを促進させてください。
・新しい建物には、上記の換気口がないタイプもあります。床下基礎断熱を行っている場合があります。その際は、水や泥を取り除き、清掃、消毒、乾燥を行ってください。
 
⑥見落としがちな場所

 
見落としがちな場所

 
 家屋の清掃と消毒範囲は、浸水した壁や床になります。床の清掃や交換は意識がいきやすいのですが、壁部分は気付かなかったという方が多くいます。そこで、住宅中でなおす前に一度確認していただきたい場所は、平面図の7か所になります。特に備え付けられているものと壁の間になります。
室内側からの対応が難しい部分もあります。その場合は、外壁側から作業することになります。
 

2.壁や床のはがし方

 
壁や床のはがし方

 浸水被害を受けた部分を復旧するためには、リフォーム工事の前に、解体、清掃、消毒、乾燥が必要になります。大工さんが忙しく来れない間に、可能であれば、ご自身や手伝いの方で、仕上げ材の撤去、断熱材がある場合は断熱材の撤去、清掃、消毒、乾燥を行うことが、カビの発生を防ぐうえでも有効です。上記の図のプロセスで行うことができます。
 

3.壁や床のなおし方

 
 家屋復旧の理想は、すべての床と壁を撤去し交換することです。しかし、災害復旧による予算は家屋だけではありません、車や家財道具など多岐にかかります。家屋調査へ伺うと、復旧に関することと日常生活を同時に行うため、疲労し、頭もいっぱいで、どこから手をつければよいのか、どうすればよいのかわからないというお話を伺う機会も少なくありません。そのため、段階的にどのような家屋復旧方法が考えられるか、家屋復旧に関するなおし方の案を紹介します。
 
①全部一気になおす
 浸水した部位をすべて解体し、清掃、消毒、乾燥後に新しい建材でつくりなおす方法です。もっともカビを防ぐことができます。
 
②段階的になおす
 すべての部屋を一気にリフォームせずに、住みながら段階的にリフォームする方法もあります。水まわりやリビング、ダイニング、キッチン、トイレのリフォームを優先し、他の部屋は、可能であれば後日リフォームを行う。浸水被害後は、大工さんも忙しくなかなか来てもらえないこともあるので、家屋内を部分的にリフォームをしてもらい、後日直してもらう部分を残す方法です。
 また、家屋が広く居住者数が少ない場合は、すべての部屋を利用していない場合があります。その場合は、日常生活に主に必要な部屋の範囲のみリフォームする考え方です。減築ならぬ減部屋リフォームです。
 減部屋したリフォーム設計事例があります。こちらもご覧下さい。
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③DIYで解体
 リフォーム予算のこともあるのですが、時間と体力があれば、DIYで解体とリフォームという方法もあります。リフォームは大工さんにまかせるとしても、解体のみDIYを行うと、カビの発生を防げる点ではメリットがあります。また、大工さんが忙しく工事に着手できない期間に、自分でDIYで解体し、清掃、消毒、乾燥しておけば、乾燥期間も長く確保できるので、カビ防止には有効です。
 
④経過観察
 調査へ伺っていると、フローリングや壁の一部を解体してなおせない場合もあります。その場合は、床下点検口や天井点検口から、定期的に、床下の状況や壁の状況などを確認し、カビが増えていないか、カビ臭さはないかなどの確認を行うことが安心につながると思います。経過観察して、異変を感じたら、工務店等へ相談し、一部解体し状況を確認の上リフォームの検討をして下さい。
 
⑤仕上げ材などを見直す
 家屋相談を受けていると、来年また浸水したらどうしようという心配もよく伺います。しかし、先のことは分かりません。ただし、リフォームする際に利用する材料を選ぶことは可能です。以下のような案もあります。
・床材は、複合フローリングや畳をやめて無垢フローリングにする。畳がほしい場合は、フローリングの上に、置き畳を敷く。
・断熱材は、繊維系断熱材(グラスウール等)でなく、発泡系断熱材とする。
・腰壁を撤去し新たに張る場合は、合板等をビスでとめてはがしやすくする。
・プランを変更するリフォームであれば、お風呂と洗面所などを2階にする。
 
 

最後に

 
 被災家屋の対応説明会や被災家屋調査へ伺って感じることは、浸水した家屋をなおすための知識や情報を持ちあわせている人が少ないということです。一般の方はもちろん、建築関係者でも少ないと感じました。そのため、リフォーム予算や早く復旧したいという要望もあると思いますが、浸水した建材を取り除かないで、その上から新しい建材を張っている話も伺っています。
 
 住まいづくりは、不安の連続です。それは、初めて住まいのことを考えるので、知識と経験がなく、不安が募ります。しかし、住まいづくりに関する情報を学び、相談できる人がいれば、ずいぶんと住まいづくりは安心でき楽しくなります。そのために、私は、住まいづくりのコラムや情報発信、設計者として住まい手さんが安心して取り組めるよう、相談対応を丁寧に行っています。
 
 そこで、今回は、浸水被害家屋復旧のための情報を建築の知識や設計者の視点も踏まえコラムとしてつくりました。復旧リフォームを検討しているが、どうしたらよいか分からない場合のご参考になればと思います。
 しかし、住まいの状況、条件は千差万別です。そのために、個別に家屋調査を行い無料相談対応を行っています。いわき市内であれば対応いたしますので、お気軽にご相談ください。
浸水家屋調査の様子はこちら。 一般家屋調査の様子はこちら。
 連絡先は、環デザイン舎 北瀬 
 TEL080-5417-0082
 メールkitase8@gmail.comまで。
 
 この資料は、自由にコピーしてご利用ください。コピーして利用しやすいように写真ではなくイラストで構成しています。環デザイン舎HPからPDFでダウンロードできます。写真については、参考にさせていただいたサイトにありますのでご覧下さい。コラム内で修正したほうが良い点や疑問がある場合は、kitase8@gmail.com(北瀬)までご連絡ください、対応いたします。

 

 

水害対策住宅が竣工しました

水害対策住宅IOハウスが竣工しました。2019年の床上浸水被害後に建て替えました。水害対策を考えた住宅です。

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